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楽器をやっていると、よく「歌う」という言葉を耳にしますが、声じゃなく「楽器で歌う」とは、これいかに。

ここでいう「歌う」という言葉は、もちろん比喩なわけですが、楽器で歌うためにはどうすればいいかについて、知識と考えを整理してみたいと思います。

たまには少し、歴史の話などを。



旋律

「メロディー」という言葉は、ギリシャ語で「歌うこと」を意味する「メローディア」に由来すると言われています。
しかしこの「メローディア」、もともとは「歌(メロス)」と「詩(オード)」の合成語らしく、「詩を歌う」というニュアンスがあったようです。面白いですね。

ということは、歌はもともと、「詩を歌うもの」だったのでしょうか。


「歌詞のない歌」というものは、あります。何の言葉にも依らない、アフリカの民族に伝わる歌にそういうものがあって、メロディというか、叫び声のようなものなのですが、あれは広大な大地を目の前にして何か言葉にできない大きな感情の高ぶりを表現するような、そんなダイナミックな抑揚と音程によってかたちづくられているそうな。



肉声と器楽

やがて楽器が歴史に登場して、旋律を肉声以外でも奏でられるようになると、「言葉の付随しないメロディ」というのがたくさん生まれて、研究されるようになりました。

それまではメロディと言えば歌、歌といえば詩、つまり言葉と結びついたものでしたから、やがて「肉声による旋律」と「楽器による旋律」を分けて考えよう、という動きが出てきます。

この2つには名前がありまして。



声楽旋律


もっとも古いメロディのかたち。
歌から生まれた旋律を、声楽旋律といいます。
声楽旋律とは、言い換えれば「肉声で歌うこと」を前提とした旋律です。
なので、

・比較的狭い音域
・音程の跳躍はあまりない
・常に言葉との結びつきを持つ

といった、「肉声で歌いやすい」旋律となっています。



器楽旋律

次世代のメロディのかたち。
肉声で歌う前提の声楽旋律に対し、楽器で弾く前提の旋律でつくられた旋律を、器楽旋律といいます。

・音域も、使う音も、楽器の性能に依存する
・跳躍を含むことも多い。

例えば昔のラッパは、出せる音の種類が少なかったので、出せる音だけで旋律がつくられました。
そんな旋律です。



ふたつに分けられ、そして混ざった。

この2種類の旋律は時代によってどちらが主流かが異なり、お互い影響し合ってきました。
楽器の発展というのは、人間の技術の発展に伴っていましたから、技術が劇的に発達した頃には器楽が優勢に、その後もう一度歌を見直そうと声楽が優勢に、そしてまた技術が発達して新しい器楽旋律が登場し……そんな感じです。

年代で言うと、1600年以前を声楽旋律優位の時代、以降を器楽旋律優位の時代、と分けられることもあります。西洋音楽のお話ですが。

影響し合うふたつの旋律は、やがて混ざり始めました。
例えば18世紀のオペラで流行った、“器楽旋律を模倣した”跳躍の激しい技巧的な「歌」、コロラトゥーラ。

有名なのはモーツァルトのこれ。



歌劇「魔笛」第2幕より 「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」

 通称「夜の女王のアリア」です。

どう考えても鍵盤楽器で弾く方が弾きやすそうなメロディですね。歌なのに器楽旋律、というわけです。面白いですね。


やがて19世紀に登場した「ロマン派」と呼ばれる音楽では、それまでの音楽と違って明確に「感情を表そう」という意図の下、旋律が書かれました。
それまで、「歌は言葉があるから「嬉しいよ~」とか歌えば感情が表せるけど、器楽では言葉が発せないから、感情は表せないだろう」と考えられていたのですが、「そうでもないぞ」ってことをこの辺で発見した方がいらっしゃるんですね。

注目されたのは「歌い方」。
笑い、泣き叫び、噛み締め、淡々と述べ。
例えば知らない外国語の歌を聴いてもどこか心動かされることがあるように、歌詞ではなく歌い方、つまり旋律をどう演奏するか、というところに感情を表現するポイントがある、という発見があったのです。

そこで器楽旋律でも、声楽の要素を取り入れるようになりました。



楽器で“歌う”ために。


楽器で歌の、真似をする。

具体的には、

・息が続かないような長い伸ばしをやめる
・声で歌いにくいような抑揚はつけない


なんかが、わかりやすいポイントです。

例えばいきなり大きな声を「アッ!!」と出すのはたいへんでパワーが要りますが、「――ぁぁぁぁあああああーー!!」って風にクレッシェンドしながらだと、大きな声も出しやすいですよね。

楽器だと、この「アッ!!」みたいにいきなり大きな音を出すことができてしまうので、意識的に肉声の歌に近づけようとしないと不自然になりがちです。

ちなみにこの「不自然」という感覚は、「人間が肉声で歌って歌いやすいかどうか」という基準で判断されていると考えています。

管楽器は息を吹いて演奏するので、歌と同じ「呼吸」に基づいて演奏できるため、自然な抑揚がつきやすいのですが。
弦楽器は、いきなり呼吸と結びつけて考えるのは(そういうことを教える方に初めに教わらないと)難しいでしょうから、呼吸や歌の抑揚を意識的につけないといけません。
先生なんかに「この箇所もっと歌っていいよ」と言われても、「歌うってなんだよ…」と考えてしまう弦楽器奏者。アマチュア演奏理系男子にありがち。



現代は。

21世紀はロマン派の後の時代なので、感情表現のある曲や演奏を聞きなれた耳になっていますから、器楽でも歌わないと、不自然に物足りなく聞こえます。
もちろん曲によっては、あえて無感情に、歌わないことで「感情を押さえ込んだ表現」をした方がより効果的、なんて場面もあるでしょう。

大事なのは「器楽で歌うとはどういうことか考えて弾く」ことだと思います。

歌の模倣、呼吸、抑揚。

実際の演奏のテクニックにはわたしもこの程度にしか落とし込めていませんが、表現を考える上で「歌う」という行為は欠かせません。

今後も考え続けたいテーマのひとつですね( 」´0`)」



なお、今回の参考文献はこちら。

音楽の基礎 (岩波新書)
芥川 也寸志
岩波書店
1971-08-31


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斎藤秀雄 講義録
斎藤 秀雄
白水社
2005-01-24

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